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第42話 暗殺計画を阻止せよ!

Author: 黒蓬
last update Last Updated: 2025-04-02 06:00:44

宿に戻った俺達は、その日は念のため同じ部屋で交代で眠ることにした。

今更俺達を襲うことはないと思ったが、万が一があってミアの足を引っ張ることだけは避けたかったからだ。

結果としては予想通り、何事もなく朝を迎えた。

「さて、今日が本番だが俺達はいつも通りに振舞うしかないか。もどかしいな」

「そうですね。自分達だけが何もできないのはもどかしいです。でも、今日はそれが私達にできることですから頑張って自然体を装いましょう!」

カサネさんが敢えて楽しげな声でそう言った。

そうだよな。俺達が変な態度を取って、奴らに気づかれでもしたら最悪だ。

「あぁ。折角だしミアが教えてくれたこの街のおすすめポイントでも回るか!」

「えぇ、そうしましょう」

俺もその声に合わせるようにしてそう言った。

悔しいが俺達にできることはないのだ。割り切ることも大事だろう。

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Side.エルミア(ここからはエルミア視点のお話になります)

アキツグたちと別れた後、私はまずゴドウェンに事情を説明し近衛兵達に夕食は控えめにして、眠たげな様子を見せるように指示を出した。

睡眠薬の混入を止めれば簡単だが相手に気取られては意味がないのだ。

そして私自身はさも手に入れた希少なハイドキャットを見せびらかしたい風を装いながら、手当たり次第に皆のところを回っていった。

これも特定の人物のところだけを当たって怪しまれないようにするため。その中で信頼の置けるものにだけ作戦を伝えた。

夜になったら私は何も知らないふりをして寝たふりをするしかない。最後を他の人達に任せるしかないのはもどかしいが、私が行っても足手まといにしかならない。

だから、私にできるのはいざという時に人質にならないよう自分の身を守ることだ。

深夜になると、王宮内が俄かに騒がしくなる。計画が実行されたのだ。

(お父様、ご無事かしら)

敵の規模、そして内通者が誰か分からなかったのが不安材料ではあるが、計画自体は割れているのだ。防ぐことはそ

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